受け継がれていく『プリティーリズム』の精神
『劇場版プリパラ』監督 菱田正和(最終回)

第1回第2回第3回と続いて、『劇場版プリパラ』について語っていただく最終回。『プリティーリズム』から『プリパラ』に受け継がれたものとはなんなのか、お話を伺った。

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Profile
菱田正和 Masakazu Hishida
アニメーション監督、演出家。サンライズに入社。制作進行を務め、後に演出家としてデビューする。『陰陽大戦記』にて監督を担当し、『古代王者 恐竜キングDキッズ・アドベンチャー』シリーズにて演出チーフ。その後フリーとなった。その他の監督作品に『ヤッターマン(第二作)』【第18話以降】、『劇場版ヤッターマン 新ヤッターメカ大集合! オモチャの国で大決戦だコロン!』がある。本文で取り上げた『プリティーリズム』シリーズでは監督を、『プリパラ』ではプリパラライブ演出を担当している。

ジュネの左右に座る2人

―― 今回、監督としてはこだわったけど、気付かれないかもしれない小ネタ的なところはありますか。
菱田 座席に座っているジュネの隣に聖がいるのですが、ジュネを挟んで右隣に仁が座っているんです。そこは、なぜ仁が座っているのかまで含めて感じてもらえれば……。むしろボーイズの謎めいたメッセージも含めて、ぜひご覧いただきたいところです。
―― それは気が付きませんでした(笑)。少し気になったところで言うと、エンディングの菱田さんのクレジットについてなのですが、青葉譲さんと、菱田マサカズさんと、日歩冠星さんのお三方が記載されていましたよね。あれはどうしてなのでしょうか。
菱田 青葉譲さんは最初の頃コンテを描いてくださっていたのですが、『レインボーライブ』から脚本でもお手伝いしていただき、日歩さんは『レインボーライブ』の絵コンテで手伝ってもらい、カタカナのマサカズさんは『DMF』を手伝っていただいて……。
―― いや、『DMF』では監督でしたが……。
菱田 ……すみません。ふと思いついただけです。なんて下らないことをやっているんだろうと……。本当に皆さんに申し訳ないなと思います。でも実は棲み分けはあるんですよ。
―― ああ、では各シリーズのクレジットと本編内容をしっかり見ていた人にとっては感じるところがあるのでしょうか。
菱田 そう……かもしれません(笑)。

『プリティーリズム』と『プリパラ』、エールの交換

―― 本編最後の見所としてはらぁら達がSAINTSと一緒に歌う「Make it!」がありました。このあたりは2作品のエールの交換を意識されたのでしょうか。
菱田 そうですね。どの曲が一番みんなで踊るのにふさわしいかを話し合った結果、「Make it!」でしょうということになりました。先ほども少しお話したテレビ版37話との被りは気にしたんですけど、見え方も違いますのでね。でも37話(「奇跡よ起これ!ミラクルライブ」)は泣きますよ……。相当大変なことになっていましたが……。
―― そんなに重い作りになっているのですか。
菱田 BパートはずっとCGパートです。もちろん作画もあるのですが……基本的にBパートはずっと「Make it!」を歌っているんですよ。劇場版もあって最大のピンチでしたが、どうにか乗り切りました。
―― それは凄い。このインタビューが掲載される頃は、その話は終わっていると思いますが、かなり思い入れを込められたのですね。
菱田 ええ。ぜひ見ていただきたいところではありますね。
―― 『プリパラ』とのエールの交換でいうと、プリズムストーンの力で、らぁら達がコーデチェンジしますよね。
菱田 筐体でゲームをやっている方はご存知でしょうけど、プリズムストーンは取り込むと、プリチケになるんです。ストーンはこれからカードに移行しました。完全に継承されましたよ、という意味を込めているんです。もう、プリズムストーンはプリチケにしてね! ということですね(笑)。今お話したことも含めて、『劇場版プリパラ』という作品は、『プリティーリズム』の煌めきを『プリパラ』さんに全てお渡しして、さらにその煌めきを高めてもらえるようなものにしたつもりです。『プリティーリズム』を見ていた方は、そこに注目していただきたいなと思うんです。『プリパラ』から入った方については、『プリティーリズム』になかったようなライブを見せるかたちで作っているつもりなので、その『プリパラ』の魅力を、過去の『プリティーリズム』と比較しながら、噛み締めていただけるといいなと思います。

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『プリティーリズム』シリーズの主人公達と、らぁらは心を交わす

 

継承される「ガチ」精神

―― それでは、『プリパラ』が『プリティーリズム』シリーズを受け継いでいるところはどこになると思われますか?
菱田 まず赤井めが姉ぇがいること。あとは、マスコットの墓場を共有しています。サーバでいうゴミ箱ですよね。
―― 確かに、そういった物理的なところはいくつか引き継がれていると思うのですが、精神的なところではいかがでしょうか?
菱田 精神的なところですか……やっぱり、ガチで作っているということですね。視聴者に対して手加減はしない。トーンとしては明るく分かりやすくにはなっているのですが、「このぐらいでいいんじゃないの?」ということはやっていないですよね。突き落とすところまで突き落としています。なんといっても、ファルルが機能停止してしまうわけですからね。
―― 『プリパラ』の監督は森脇さんですが、やはりその力は、傍にいらっしゃって感じますか。
菱田 ええ。やっぱり、女の子向けの専門職の方だなと思います。僕は男児向けのところが抜け切れないのですが、森脇さんの力で、ようやくカチッとハマってきた気がしますね。この先何年も行けそうな体制を築きつつあるなと思っています。僕としては『プリティーリズム』、『プリパラ』とシリーズが続けば続くほど栄誉なことなので、ありがたいですね。
―― そのカチッとハマったというのは、女の子らしさと、『プリティーリズム』らしさがハマったんでしょうか。
菱田 それに加えて作っている委員会の向いている方向も、真っ直ぐみんな同じ方向を向いているのが、ハマったといえる理由ですね。もともと、『プリティーリズム』は声優ファンに向けたい、おもちゃを売りたい、人形を売りたい、ゲームをやってもらいたい、ということで、各社ターゲットがバラバラだったところがあるんです。ターゲットによっては全然作るものが変わってしまうのですが、『プリパラ』という舞台を得て、やっと一致してきたように感じるんですね。そのあたりは、『プリティーリズム』の頃、僕が凄く苦労していたところなので……。
―― 今後『プリパラ』も新たな展開を迎えます。テレビ版『プリパラ』について、一言いただけますか。
菱田 『プリティーリズム』シリーズを3年やって、『プリパラ』も1年やって、歌って踊ってのアニメというのはひとつのかたちを作ってしまったと思うんですよ。今年1年はそこからどういうふうに進化していくかっていうのが見えてくるのではないかと。そちらのほうに注目しながら見ていただけると、楽しいんじゃないかなと思いますね。
―― なるほど。ありがとうございました。……ちなみに、森脇監督に対するライバル心なんかはあったりするのでしょうか?
菱田 ええ? いやいや、ないですよ! だってひと回り以上、年齢が違うんですよ。森脇さんは、「ドラえもん 初期演出四天王」のおひとりと言われてらっしゃる方なんです。あの歳で、女性で監督をやられている方っていないですよ。とにかく凄く働くんです。いつ寝てるのか分からないぐらい。だから改めて勉強させてもらっていると言いますか、正直ぞっとしながら見ています(笑)。僕は元々制作出身なので、こう見えて、ある程度バランスを取って制作していくタイプなんです。でも森脇さんはスタッフにも容赦がない。ある意味『プリティーリズム』以上に、ガチな作り方をしているんですよ。

『劇場版プリパラ み〜んなあつまれ!プリズム☆ツアーズ』
Official Website
http://pp-movie.com

テレビアニメ『プリパラ』
Official Website
http://ani.tv/pripara/

On Air Information
午前10時より、テレビ東京系にて放送中

(C)T‐ARTS/syn Sophia/劇場版プリパラ