キャラクターを自分に引き寄せられたと思えた瞬間
『落第騎士の英雄譚』ステラ・ヴァーミリオン役 石上静香

海空りくの小説を映像化したテレビアニメ『落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)』。己の魂を武器に変えて戦う伐刀者(ブレイザー)が集まる破軍学園を舞台に、「落第騎士(ワーストワン)」と呼ばれる黒鉄一輝の奮闘を描くアクション学園ファンタジーだ。本作のヒロイン、ステラ・ヴァーミリオン役を演じる石上静香さんに、本作の魅力やアフレコ時のエピソードなどを伺った。

Profile
石上静香 Shizuka Ishigami

プロ・フィット所属。主な出演作に、『トライブクルクル』飛竜ハネル役、『食戟のソーマ』水戸郁魅役、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』シル役、『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』華城綾女役、『精霊使いの剣舞』エリス・ファーレンガルト役、『健全ロボ ダイミダラー』喜友名霧子役などがある。

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メインヒロインを演じるプレッシャー

—— ステラ役に決まった経緯を教えてください。オーディションを受けられたのでしょうか。
石上 事務所で収録したテープオーディションで、ステラ役オンリーで受けさせていただきました!! オーディションの原稿をいただいたときに「これは受からないんじゃないかな」と内心思っていたんです。
—— なぜそう思われたのでしょうか。
石上 これまでツンデレキャラをやらせていただいたことはあったんですが、ここまで可愛い感じのツンデレキャラを演じたことはなかったんです。「きっとこの役は、もっと若くて可愛い子が演じるだろう」と思ってしまいまして……。もちろん折角いただいた機会だったので全力で頑張ってやらせていただきました。
—— オーディションの結果は、どういったシチュエーションで知ったのですか。
石上 仕事帰りでした。マネージャーさんから「そういえば『落第騎士の英雄譚』のオーディションを受けたの覚えてる?」と聞かれて「はい」と答えたら、「受かったよ」と教えていただいて。道ばたなのに「マジですか!」と叫んでしまって、マネージャーさんと2人で喜びました。
—— いいお話ですね。石上さんのお名前は『下セカ』(『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』)で覚えさせていただきましたが……。
石上 (笑)。有り難うございます。
—— ステラ役と『下セカ』の華城綾女役を、同じ方が演じられているのはちょっと意外でした。
石上 そうかもしれませんね。これまで演じさせていただいたキャラクターは、比較的低めの声のキャラクターが多かったんです。こんなに高めの声で、ほんとにメインヒロインみたいな役はステラちゃんがほぼ初めてでした。
—— 原作を読まれての印象はいかがでしたか。
石上 役が決まって原作を購入するために本屋に行ったとき、原作本の表紙が、ほとんどステラちゃんだったのにビックリしました。勝手な印象かもしれませんが、学園もののラノベって、女の子が沢山でてきて、表紙の巻ごとに違う女の子が載っていることが多いじゃないですか。あと、1巻で主人公の一輝とヒロインのステラがくっつくというのも衝撃でした。全体をとおして、ヒロインはピンポイントでステラちゃんという印象だったんですよね。これがハーレムものの作品だったら、色んな女の子のキャラクターがいて、読者や視聴者の方も「僕はこの子が好き」という風に分かれると思うんですが、本作ではほぼステラちゃんオンリーだったのでプレッシャーが凄かったです。可愛いらしく演じなければなと思いましたし、自分の中では、可愛くできているのかどうか、今でも不安なところがあります。

ツン4・デレ6から、ツン1・デレ9に

—— 1話のアフレコには、どんな演技プランで臨まれたのでしょうか。
石上 ツンデレの女の子は何回か演じさせていただいたことがありましたが、ステラちゃんはどのぐらいのツンとデレの割合でやればいいんだろうとまず考えました。とりあえず、私はツン4・デレ6ぐらいの気持ちでテストをやらせていただいたんですが、音監(音響監督)さんや監督さんからのご指摘を受けて割合を変えたんです。「言葉はツンツンしているけれども、1話から内心では全然もうデレデレしてください」といったご指摘でした。それを受けて、本番ではツン1・デレ9でやらせていただきました。
—— 冒頭のツンツンしているときから、好意をもっている感じをだされていたと。
石上 Aパートでは出会い頭の事件もありましたのでツンは少し強めでしたが、Bパート最後の一緒に部屋で過ごすところでは、気持ち的にほぼデレでやりました(笑)。
—— 本作はアクションの場面が多いですが、戦闘時に入れるセリフでは、どんな工夫をされたのでしょうか。
石上 1話で一輝とステラが戦うシーンでは、映像にあわせて動きの通りに声を入れさせていただきました。私は戦闘シーンの演技の経験があまりなかったので、あとで弾かれてもいいって思うぐらい、とりあえず音が必要そうなところには全部入れた感じです。ステラは一輝に絶対勝つと思っているので、比較的余裕な感じというか、冷静さのようなものも出すようにしました。
—— 2話以降のステラは、日常シーンでデレたり、事件に巻き込まれたり、様々な顔をみせるようになります。どんな風にステラというキャラクターをつかんでいったのでしょうか。
石上 私はまず原作や台本を読みこんで、とにかくキャラクターに近づく(役の)作り方をするんです。で、後半になるにつれて、キャラクターをちょっとずつ自分に寄せていって、だいたい半分半分ぐらいで演技できるとバランスがいいかなと思っていて。
—— 演じながら少しずつキャラクターに自分を入れていくと。
石上 そうですね。最初はもう全部、私が寄っていくんですけれど、だんだんと自分の側に引き寄せるみたいな感じです。2話ではいきなりお風呂に入って一輝の背中を流したりして、演じながらステラちゃんは思っていたより積極的だなと思いました(笑)。そうしたところも、なるべく自然な流れでもっていけたらいいなと思いながら、やらせていただきました。
—— 4話で、アウェイな雰囲気のなか一輝を励ますために叫ぶところが心に残りました。ああして声をはるところは、ご苦労されたのではないですか。
石上 有り難うございます。ただ、叫ぶのは苦手ではなくて、むしろやりやすい方なんですよ。喧嘩腰のセリフや、叫んだりする方が個人的にはやりやすかったです。今言っていただいたようなところの方が、自分なりの演技ができた気がします。さきほどの役に引き寄せる話でも、4話の叫びをきっかけに、キャラクターを自分に引き寄せていけたような気がしていて。
—— なるほど。
石上 反対に、自分はどちらかというと可愛らしく「好き」と言ったり、キャピキャピしたセリフを言う方が、あまり得意ではないんですよね(苦笑)。2話のお風呂のシーンでは、台本に書いていないところでも、けっこう「息をください」と言われました。堂々と洗っているようで、実は物凄く恥ずかしがっているような感じがでるようにテイクを重ねました。

ステラが一輝の背中を流す2話より。セクシーな場面も本作の魅力のひとつ。

ステラが一輝の背中を流す2話より。セクシーな場面も本作の魅力のひとつ。

—— 完成した映像をみた印象はいかがでしたか。
石上 もう凄いのひとことしかでなかったです。絵も綺麗でしたし、何よりやっぱりアクションシーンに凄く力が入っている作品なんだなと思いました。台本のスタッフ欄にもアクション作画監督という役職があって、そういう方がいらっしゃるから動きもしっかりして格好いいんだろうなと。オープニングも白と黒と赤の3色のみで演出されているのが凄くいいなと思いました。一刀修羅の視点で描かれているのかなと勝手に解釈しながらみさせていただいていました。

役者自身が発したものを取り入れてくれる現場

—— 各話に登場する桐原静矢役の松岡禎丞さんや、綾辻絢瀬役の小林ゆうさんなど、敵役の演技も印象的でした。石上さんは、どうご覧になっていましたか。
石上 皆さん、本当にベテランの方々で、毎回勉強させていただきながら後ろ姿を見ていました。もう1話から出ているんじゃないかというぐらい、物凄くインパクトのある演技をしてらっしゃっていて。私も、インパクトが残せるような役者になれればいいなと思いました。
—— 作品全体として、ここはアドリブなのかなという芝居が多かったように思います。現場ではアドリブをいかしていこうという雰囲気だったのでしょうか。
石上 そうですね。アドリブを入れられる方は、基本的にテストのときにやられていました。その後、音監さんからの直しで、色々とご指摘を受けるんですが、そこで「ここのアドリブはいらないです」と言われない限りは、基本全部採用される感じでした。役者自身が発したものを取り入れてくれる現場だったと思います。
—— ステラと、珠雫役の東山奈央さんとのやりとりも楽しかったです。
石上 有り難うございます。東山奈央ちゃんとのやりとりは、アドリブが多かったんですよ。2話での出会い頭の言い合いは最後まで台本に書かれていたんですが、後半では「残りはアドリブで」みたいに書かれているシーンが何回かあったんです。そういう時は、2人で「ここはどうやって言い合おうか」と相談していましたね。ステラよりも珠雫の方が言葉の使い方がうまい感じなので、最後はステラが言い負かせられるようなセリフを考えたりしていました。自由にやらせていただいて楽しかったです。

一輝の妹である珠雫とステラは、恋敵(?)で犬猿の仲。徐々に不思議な信頼関係が生まれていく。

一輝の妹である珠雫とステラは、恋敵(?)で犬猿の仲。徐々に不思議な信頼関係が生まれていく。

—— アフレコ期間中に印象的だったエピソードがあったら教えてください。
石上 収録時にお誕生日を迎えるキャストの方がなぜか多くて、毎週のようにお祝いをしたのが凄く印象に残っています。あんなに連続でケーキが出てくる現場はなかなかないと思います(笑)。ケーキの種類が被らないように、スタッフの方が違う感じのものを買ってきてくださっていて、毎回有り難くいただいていました。
—— 最後に終盤の見どころと視聴者へのメッセージをお願いします。
石上 10話以降は全部見どころで、ここっていうのがちょっと言えないぐらいなんです。金元(寿子)さんが演じる東堂刀華ちゃんも出てきて、主要キャラも全員揃います。ステラと一輝の関係が進展するのかどうかもチェックしていただきながら観ていただければなと。原作をすでに読まれた方にも楽しめる演出になっていると思いますので、ぜひ最終回まで観てください!

<『落第騎士の英雄譚』大沼心監督インタビューを読む>

Official Website
アニメ『落第騎士の英雄譚』公式
http://www.ittoshura.com/

Soft Information
Blu-ray&DVD第1巻、12月25日発売
価格:Blu-ray7,000円+税、DVD6,000円+税
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(C)海空りく・SBクリエイティブ/落第騎士の英雄譚製作委員会