『COCOLORS』(劇場版)のロードショー初日15時の回のあと、横嶋俊久監督によるティーチインが行われた。質疑応答をふくむ約30分の模様をノーカットでお届けする。作品の根幹に関わる話を交えながら、横嶋監督が『COCOLORS』で伝えたかったことの一端が語られた。鑑賞を前提とした内容になっているので、映画を観たあとに読んでいただきたい(収録日/2017年12月2日、収録場所/下北沢トリウッド)。
<告知>
2017年12月30日(土)、コミックマーケット93にて紙版の「AniKo創刊準備号」を頒布します(スペース名「AniKo」土曜 東D47b)。100ページを超える『COCOLORS』特集を始め、『幼女戦記』を制作したアニメーション制作会社NUTプロデューサーの角木卓哉さん、ゲーム作曲家の菊田裕樹さん、映画監督の松村克弥さんへの取材記事など盛りだくさんの内容です。くわしくは、この記事の終わりをご参照ください。
Profile
横嶋俊久 Toshihisa Yokoshima
アニメーション監督・演出。ゲームのPVやOP、ミュージックビデオ等の演出を多く手がけ、2009年に短編『アマナツ』を監督。神風動画所属を経て現在はフリー。『COCOLORS』では、監督・脚本を担当。
『COCOLORS』(劇場版)上映情報
下北沢トリウッド(東京都世田谷区代沢5-32-5-2F)にて、2017年12月2日より上映中(火曜は定休)。上映スケジュールは劇場サイト(http://tollywood.jp/)を参照。英語字幕版の上映もあり。
本日はどうもありがとうございました。こんなニッチな作品の初回に……いや、初回は前の回でしたが(笑)、わざわざお越しいただきありがとうございます。本当に今回はトリウッドさんのご厚意もあり、この作品をロードショーというかたちで上映できたことが、まず凄くありがたいことですし、そこにお客さんとして皆さんに来ていただけたことには本当に感謝の一言しかありません。ティーチインってなんだっていうのもあるんですけど、どうして『COCOLORS』という作品を作ろうと思ったのかという経緯をお話できればと思います。
やっぱり、アニメって、きちんと顔がでてきて、その顔が可愛かったり格好よかったりというのがあると思うんですけど、そうでない「顔が見えないアニメーション」って、どういうものができるんだというところから企画がスタートしていきました。僕らは3DCGで作品を作っているのですが、昔は表情をつけるのが難しい時代があったんですよね。その頃、僕が所属して仕事をしていた神風動画というスタジオでは、設立当初から3DCGの作品を作っていたのですが、キャラクターにマスクを被らせて、(3DCGの)弱点(である表情を)を見せないような作り方を初期の頃にしていたんです。それから10年ぐらい経って3DCGの技術も進化してきて、手描きのアニメと遜色ないとまでは言えないかもしれませんが、普通のアニメと区別がつかないぐらいまでの表現ができるようになってきました。そんな今、あえてマスクを被らせてみたら、どんなアニメーションが作れるのかに挑戦してみたかったんです。
やっぱり顔って、僕ら人間がコミュニケーションをとる媒介として、いちばん有効なものだと思うんです。表情があったから、僕らは人間になったところがあるというか。相手の表情をみて、どんなことを考えているか(相手の)心の機微を察知できる能力――それがない世界ってSF的な設定としても捉えることができるんじゃないかと思います。『COCOLORS』の世界の住人は、生まれたときから自分の姿を見たことがないんです。オープニングタイトルで、そのあたりの設定が描かれているのですが、チラッと見えるだけなので、(意味が分からないまま)おいていかれてしまうところがあったとは思うんですけれど。
自分の存在を知らず、確かめられない彼らは、何を頼りにコミュニケーションをとっていくのだろうか。主人公のアキというキャラクターは非常に弱い人で、フユのヘルメットに顔文字のようなものを描くんですけど、あれって相手の感情をまったく無視しているんですよね。相手がどう思っているかではなくて、自分がこう思ってほしいということを押しつけるような人なんです。心も弱くて、相手によく思われたいのか、とっさに都合のいいことばかり言って実際には何もできない。僕なんかも、そういう人間なんですけどね(笑)。
主人公をああいうキャラクターにしたので、最初、非常に難しいことになってしまいました。物語に登場するキャラクターって、自分で行動して状況を打開していくのがセオリーだと思うんですけど、アキはいっさい能動的に動けないし、ずっと立ち止まって、(現実から)目もすぐ背けてしまう。ただ、そんなキャラクターを描いた物語というのも、世の中に存在してもいいんじゃないかなと。僕自身が、ほんとに彼みたいな人間で、正直今日も、「上映初日に、誰もお客さんがいなかったらどうしよう」とか、「朝起きたら寒いし、トリウッドに行くの嫌だな」とか思いながら来ましたし(笑)、現場でこのアニメーションを作っているときも、毎日「スタジオに行くの嫌だな」と思いながら作っていたところがあって(笑)。でも、だからこそ踏み出せるというか、「仕方ない(けれどやる)」っていうことが、僕はそんなにネガティブなことではないんじゃないかなというのが、わりとこの作品で言いたいことの1つだったりするんです。
何かしらの重荷を背負わされてしまって、その重荷のせいで「ああ、もう!」なんて言いながら踏み出す一歩というのもあるんじゃないかっていうのが、自分の中であったんですよね。ポジティブなことだけが人間を前に推し進める原動力ではないんじゃないか、というか。ネガティブなことも、その人を形成する凄く重要な要素だし、それがあるからこそ進んでいけることもある。そうして、へこたれながらも進んでいくことが(作品の)テーマになりうるんじゃないかって思いながら、このアニメーションを作ったところがあります。
この作品は、凄くエンターテイメントなわけでもないので、今日観ていただいたお客さんの感想は各々だと思います。ただ、やっぱり、こうして1000円を出していただいて、1時間ほどの貴重な時間を使って観ていただいたと思いますので、何か1つでも持ち帰ってもらえるものがあればいいなと思いながら、僕も後ろのほうで一緒に観ていました(笑)。「音楽がよかった」「アニメーションがなんか面白かった」「画がけっこう綺麗だったぞ」とか、何か1つでいいので、おっしゃってもらえたらなと思っています。
自分としては、けっこう世界観が面白くできたんじゃないかなって手ごたえを感じています。特殊なやり方で美術を作っていきましたので、そういうところも見どころとして1つあるのかなと。せっかくですので、背景美術がどうやって作られていったのか、ちょっとお見せしたいと思っています。その前に、この作品の世界観の基礎みたいなものをお話しますと、さきほどお話した(マスクで顔を隠した約10年前の作品である)『ガソリンマスク』という、昔、神風動画が作った作品がありまして、それが基調になっているところがあります。実は、この『COCOLORS』という作品も、新しい『GASOLINE MASK』プロジェクトの一部で、ほんとは3部作の予定だったんですが、今のところ僕の『COCOLORS』だけができているという状態です。では、プロジェクトの最初に公開した『GASOLINE MASK』プロジェクトのティザー映像を流したいと思いますが、「観たことあるよ」って方はいます? (あまりいないようなので)では、ぜひ観てください。
(ティザー映像を上映後)『COCOLORS』は、全然違う作品になっていますよね(笑)。ティザー映像では、凄くメカメカしい何かがでてきたり、ハリウッドチックな音処理も入ったりしていますが、実はこれが最初の映像だったんです。世界観としては、「富士山が噴火して、有害なバクテリアが噴出されたその後」みたいなものでして、「その設定さえ守れば、何を作ってもいいよ」と言われたので、「じゃあ僕は、ちょっとこういうものが作りたいので」と作ったのが『COCOLORS』なんです。今観ていただいた映像からこの作品ができたって、たぶん皆さん信じられないと思うんですけれど……。
僕らが『COCOLORS』の背景美術を作るとき、まず「どんな世界観にしようかね?」という設定のところから入っていきました。その際、参考にした建物があります。新居千秋さんという建築家の方がいらっしゃって、その方が作る建築物が凄く面白いんですよ。秋田のほうに「由利本荘市文化交流館 カダーレ」という、文化会館のような施設があって、曲線が活かされた襞(ひだ)のような有機的な構造の建築なんです。あと、栃木にある大谷資料館という、石を切り出していた場所も参考にしています。地下の神殿のような雰囲気で、今でも中を見学できるので、機会があったらぜひ行っていただけたらと思いますが、その2つを組み合わせたような世界を作ってみたいなと考えました。そこにパイプなどを走らせて、スチームパンクっぽい世界を作れたらなあと。
(スクリーンに本作の背景原図を映しながら)これが原図で、(レイヤーを重ねていく様子を見せながら)これが完成までの過程です。観ていてお分かりのとおり、1回(原図で)建物を建ててから、(描き直して)崩していったりするんですよね(笑)。「これは凄いなあ」と思いながら一緒に制作していました。実はこの原図を描かれた方が今日いらっしゃっているんですけど、(後ろのほうの席に座っている橋口コウジさんに向かって)これは全部鉛筆で描かれているんですよね?(「ええ」という返事を聞いて)本当に、1枚の原図ができあがるまでに凄い苦労があるのが観ていて分かると思います。こうして全部手描きで線をとっていただいて美術に反映させていくことをしながら、地下や外の世界を構築していきました。
地下のほうには、石を切りだしたり、パイプとかを走らせたりしながら、ちょっとファンタジーな有機的な処理にして、地上に近づくにつれて直線的なものを増やしていっています。地下の世界に住む彼らは、マスクを被っていて自分の肉体を知らない。だからこそ、ちょっと有機的な人体の中のような場所に住んでいる、みたいなことで設定を進めていきました。
ここで、背景原図から美術ができるまでをまとめたショートムービーを観ていただきたいと思います。こうやって、本当に1カットずつ作っていますというものなんですけど。(ムービーを流しながら)これが僕から出した3Dレイアウトですね。それを、あちらにいる橋口さんが絵におこしていきながら世界を構築していく……という。これだけ繊細な作業を重ねて、世界を作っていっていることがお分かりいただけると思います。ほんとに(画面の奥から)世界ができあがっていくという。これを1カットずつやりとりしながら作っていっています。
通常の(アニメの)美術の作成って、複数のアニメーターや原図の方にいっせいに発注して進めていくのがセオリーだと思います。ただ僕らは、1年がかりで、こういったやり取りを密にしていきました。原図を描いたのは橋口さんほぼ1人ですし、その原図に色を塗って美術を作っていくのも末弘(由一)さんという美術監督の方に、ほぼ1人で直接やっていただいていて。そこに僕を含めたトライアングルで、じっくり1年ぐらいかけて1カットずつ作りながら、世界観を作りあげていきました。
今お話した原図と美術の作業のあと、最終的な画面がどうなっているかを、ちょっと観ていただきましょう。(描いた美術の上下が大きくカットされている様子を流して)「あれだけ描いたのに、映ってないじゃん!」っていう(笑)。そんなところも多々ある作品でした。
橋口さんには、本当に「この世界を作ろう」という意気込みで制作に取り組んでいただきました。先ほど皆さんが観たように、奥のほうからちょっとずつ世界ができあがっていくんですよね。鉛筆でその世界を彫り出して、切り出しながら作っていくっていう。僕も、非常に貴重な経験をさせてもらったなと思っているのですが、しかもこれは全部、鉛筆で紙に描かれているんですよね。Photoshopのレイヤーとかじゃないんですよ(笑)。Photoshopを触られる方がいたら分かると思いますが、デジタルで描いてレイヤーで作っていけたら、また全然(手間が)違うはずですが、橋口さんの場合は、ちょっとずつ鉛筆で紙に描いてそれをスキャンしていただいて、それを美術の末弘さんにお渡しするっていうことをやっていました。
『COCOLORS』では、版画的な絵作りをしたいなと思っていて、ライン――版画では主線(おもせん)と言いますが、その黒いラインをどうしても(画面に)抽出したかった。そうなると、通常の原図では駄目なので、今回は通常の原図からさらにブラッシュアップをかけて、(画面にでる)ラインを「彫っていく」みたいな工程を踏んでいます。前に僕が橋口さんとお話したときに、「ほんとに普通の原図の2、3倍大変なことをさせちゃって申し訳ありませんでした」って言ったら、「いや、10倍大変でした」と言われちゃったんですけど(笑)、そんなかたちで作っていきました。この美術のやり方に関しては、どこもできないことじゃないかなと思っていまして、自分としてはかなりやれたなって感じているところです。
質疑応答
Q1、3DCGで作られたキャラクターが、(背景と同じ)手描きのような味わいになっているのは、モデリングや撮影の段階で何か工夫をしているのか。
まさに今回目指したのは、美術とキャラクターを乖離させないことでした。僕らが普段見慣れているアニメーションって、美術は凄く密度があって、だけどキャラクターはシンプルな線で描かれているものが多いと思います。僕自身、(自分が普段作っている)アニメを疑っているところがあるのかもしれませんが、密度の高い美術にシンプルなキャラクターがいる世界観って乖離しているところがあるんじゃないかなと感じていたんですよね。なので、「背景とキャラクターを同一の表現で映像に落としこんだら、どう見えるんだろう?」っていうのを試したかったんです。
最初、キャラクターは3DCGで作っていますが、そこから版画と同じような工程を踏んでいるキャラクターを生成して、まず輪郭のラインを抽出して、それをAfter Effectsにもっていき、今度は他のパーツのマスクをだしていくという……。つまり、版画と同じように主線(おもせん)で描かれた黒いキャラクターの縁取りのラインがあって、そこにマスクというか「版」のようなもので色を流し込んでいく。そうした工程で絵にしています。3DCGを使っていますが、非常に版画に似た工程をとっているから、ああいう処理になっているんじゃないかなと。ですので、その辺りはもう全部After Effectsという撮影ソフトで、一から組みなおしていますってことですね。(3DCGで作られたキャラクターから)素材を全部抽出して、そこから線の太さなどの調整をふくめてやっていいます。
(キャラクターの線が乱れた感じになっているのもAfter Effects上の処理なのか、という質問に対して)3DCGからラインを抽出するときに、少し歪ませるというか強弱がつくような処理を入れているんですよ。ですから、抽出したラインに、強弱がちょっとついているような感じになって、そこからさらにAfter Effects上で背景と馴染ませるように処理をしています。
Q2、(物語終盤、ダクトを抜けて)アキとフユがエスカレーターまで行く過程にでてくる建築物の構造には、具体的に参考にしたものはあったのか。
彼らが地上にでてくるまでの流れには、僕らの住んでいる地下の世界をモチーフに作っているところがあります。(首都圏)外郭放水路という、埼玉の春日部の方にある、都心で大雨が降ったときに水をそこに流しこんで水害にならないようにする地下施設があるのですが、そういうところを少し参考にしています。実際の位置関係などを考えると、リアルにそうしたところを通過しているわけではないかもしれませんが、僕らと近い世界観をだしたいなっていうのが凄くありました。もしかしたら、ちょっと見たことあるみたいに思ってもらえるような。実は、最後にアキとフユが登っていくエスカレーターって、新御茶ノ水駅のエスカレーターなんです。凄く長いんですよね。ですから、よく画面を観ると、ホームに行ったあたりの後ろの柱に「新お茶の水」って描いてあったりします(笑)。
(橋口さんからの「それは僕も知らなかった」という声をうけて)そうかもしれないですね(笑)。美術のときに末弘さんに「新お茶の水の看板を貼ってください」とお願いしましたので。(さらに橋口さんから「日比谷共同溝も参考にしましたよね」という発言をうけて)そうですね。そういったところをモチーフにしながら設計していきました。
Q3、キャラクターのネーミングに由来や意味はあるのか。特に、なぜアキとフユだったのか。
けして春がこないような世界ですので、アキとフユとしました。せっかくですので2人についての話をしますと、フユというのは、この世界のなかでは、いちばん深いキャラクターだと僕は思っているんです。アキも切ないキャラクターではあるのですが、それをさらに深化させたのがフユで、彼はあの世界で、自覚的に生きているところがあるんですよね。地下の世界の住人は、どこか諦めているというか、自分のおかれている状況を仕方ないと思って、受け入れている。でも、フユだけは、そこになんとか抗おうとしていて。なので、アキよりも、ちょっと深いキャラクターということで、フユという名称にしています。さらに言えば、シュウというキャラクターには、「アキとシュウ」って「秋」を音読み、訓読みすると同じになるように、2人はけっこう近い存在なのかもしれない、ということで描いています。
他のキャラクターは、もう語感でつけました(笑)。ただ、ギドクに関して言えば、この彼は地下の世界のことを唯一知っている存在でもあって、裏の設定みたいな話になってしまって申し訳ないんですけれど、少しそのことについてもお話したいと思います。
作中でもみんなバンバンいなくなっていくから分かると思いますが、地下の住人たちは、あまり長生きできません。10歳や15歳とか、そういうレベルの平均寿命になっています。なぜかというと、実は彼らは(人間に)エネルギーを供給している存在なんですよね。あのマスクの中では、人体まで融解しているのかどうかは分かりませんが、彼らの命を融解しながらエネルギーを作り、それを実験のようなかたちで吸い取られている。そのなかで、強い個体だったのがアキやシュウたちで、彼らは周りのやつらよりもちょっと丈夫だったために、過酷な状況に送られているっていう。
ギドクというキャラクターだけが、唯一、あの世界を管理している側なんですよ。だから彼だけが年齢が上で、実は彼だけが人間である。ただ、管理者ではあるんですけど、偉そうな感じではなくて、いわゆる中間管理職なんですよね。彼には彼なりの、いろいろな悩みがあるだろうなと僕は思います。
アキは、作中でずっと嘘をつき続けるというキャラクターですが、ギドグもまた、嘘をつき続けるキャラクターです。そういう意味で、2人は近いところがある。もしアキがあのまま成長していけば、ギドクのようになる可能性もあるんじゃないかと思います。でも、だからこそ、最後にギドクもアキがやったことにたいして理解を示したのかな……とか、いろいろ考えて作っていました。そんなことも考えながら観ていただけると、またちょっと新しい発見があるのかなと思います。
アニメーションのことで言いますと、彼らの顔が見えないので、手に思いをこめているところもあります。握った拳(こぶし)で、それぞれ何をするのか考えながらキャラクターづけしていって、握った拳を相手にぶつけるシュウのような人もいれば、フユのように絵を描く人もいる。そして、握った拳をもっていく場がなくて、引っこめてしまうアキのような人もいるという……。アキというキャラクターは、おそらく自分の感情の行き場が本当になくて、うろたえている人なんですけど、そんな彼が、ちゃんと自分の感情を受けいれるっていうところを描きたかったなあっていう……そんなアニメです(笑)。
Q4、フユがマスクをとったとき、もしかしたら人間ではないものが出てくるのではないかと思ったが、意外と普通の人間だった。あえて(フユの素顔を)映さないで話を進めることもできた気がするが、そこに監督として迷いはなかったのか。
やっぱり、顔はどこかで出さなければというのは最初からあったんですけど、どんな顔を出せばいいのかは、凄く迷ったところです。あそこまでずっと顔を見せずにやってきて、最後にバッと出たときに何が正解なのかっていうのは、ほんとに分からなかったというか、正直今でもあれが正解だったのかは、自分としては本当に分からないんですけれど……。ただやっぱり、僕らは最後、顔で語らなければいけないなっていうのはありました。最後の最後で、フユが命のともし火を消していくところは、凄く細やかな表情づけをしたんですけど、ああいうところって、僕らが人間だからこそ理解しうる表情じゃないかなと思うんです。そういうことができるキャラクターを選択したというところですね。
最後の挨拶
僕らはこの映画を、これをどうしようっていうこともなく作り続けていたところがありました。それこそ最初に企画を立てても、お金なんてどこからも出ないわけですよ、こういう作品ですから(苦笑)。なので、関わったスタッフも「これって、なんになるんだろう?」と思っていたと思います。そんななか僕は、「なんになるか分からない作品だけど、いつか劇場でかかるような絵をみんなで作っていこう」という話を絶えずしながら、みんなで作っていきました。それが今回トリウッドさんのご厚意もあって、ロードショーというかたちでこうして上映できたことに感謝の気持ちでいっぱいです。そして、そこに足を運んでくださった皆さんには、本当に感謝の言葉しかなくて……。関係したスタッフのみんなのためにも、今日やっと上映ができて、お客さんに観てもらえる機会ができたことを嬉しく思っています。ほんとに今日は、どうも有難うございました。
<コミケ出展情報>
コミックマーケット93、2017年12月30日(土)
スペース名「AniKo」土曜 東D47b
「インタビューマガジンAniKO(紙)創刊準備号」
目次
特集 神風動画『COCOLORS(コカラス)』
神風動画が新スタジオで挑む長編プロジェクト『COCOLORS』(横嶋俊久、石黒英彦、清水一達)【再録】
チャンスだけを与えられた人が何を作るのか見たかった(横嶋俊久、水崎淳平、納谷僚介)【再録】
セッションの魅力を生かした楽曲作りと演奏(阿部隆大)【再録】
背景チーム座談会(横嶋俊久、橋口コウジ、末弘由一)【新録】
制作チーム座談会(横嶋俊久、石黒英彦、上遠野学、藤原滉平、清水一達)【新録】
音響チーム座談会(横嶋俊久、納谷僚介、阿部隆大)【新録】
ロードショー初日ティーチイン採録 ※本記事
鎌田光司(造形美術)、ハタヤママサオ(フユの絵)メールインタビュー
キャスト・スタッフ・ミュージシャン コメント集
制作資料(キャラクターデザイン、絵コンテ、背景原図、背景美術)
新スタジオNUTとアニメーションプロデューサー角木卓哉の挑戦【新録】
松村克弥監督、自作を語る【再構成】
ゲーム作曲家 菊田裕樹ができるまで【再録】
金子志津枝 描き下ろしイラスト